花とアリス

花とアリス

【評価】 ★★★★★★★★★☆ 9点
【公式サイト】 http://www.hana-alice.com/
【総評】

またやられた。

この岩井俊二監督には『リリイシュシュ』の時も相当やられたけど、こっちも負けないぐらいやられた。『リリイシュシュ』は、そのダークさゆえの賛否を分断するあの後味も含めてオレは絶賛したけど、『花とアリス』の場合は観た後の素敵な爽やかさに、これまた絶賛したいと思わせる作品でした。

この『花とアリス』、実は映画公開前に全部で40分ぐらいのショートフィルム版としてネット上で公開されてて、ナローバンド用の小さいメディアプレーヤーで何回か繰り返し観た覚えがありますけど、当時のオレの感想としては、「美しい音と映像で描かれたなんだかよく掴めない三角関係のお話」程度の印象しか持てず良さもイマイチ伝わってこなかった。

それがどうだよ。今回は見事にツボったよ。

何がいいかって、花とアリスのキャラクター。もうこれに尽きます。
岩井俊二は、なんて女の子の魅力を引き出すのがうまいんだろう。それに、微妙なニュアンスの表情・しぐさ・セリフを、鈴木杏と蒼井優はなんてナチュラルに・等身大にこなすんだろう。変に意識してなさそうなところが、彼女らのキャラクターとしての魅力を引き立ててて、気付いたらオレはアリスというキャラがすごい好きになってた。

最上級の表現で言うならば、オレは、彼女の中に幻想を見ることが出来た。ここポイントね。

アリス役の蒼井優は、『リリイシュシュ』の津田役の時も、そのショッキングさでオレの中で一番印象に残ったキャラだったし、この子、これからジワジワくるんじゃないの?なんだかファンになりそうだわ。ファンレターに「蒼井そらに負けずに頑張ってください」って書いて届けたいぐらい。

まーとにかく、そんぐらいしっかりとキャラが生きてたもんだから、この2人が登場するだけであとはもうどんなストーリーでも話は成り立つんじゃないかってぐらいの勢いでした。いや逆か。このシナリオが、ストーリー展開が、うまく彼女らの良さを引き出した。こっちだな。

ストーリーの柱は2つあって、1つは「憧れの先輩が自分を記憶喪失と信じ続ける限り、私は今カノでいることが出来る」というある種少女マンガ的な話で、強引な花とアリスに振り回される宮本先輩の、特殊な三角関係が素直におもしろかった。もう一方ではアリスサイドの別の話が進行してたけど、こっちはこっちで美しい岩井ワールドが展開して素敵に仕上がってた。

いやー、時折紛れ込む小ネタ(意外なチョイ役たち)にも笑わせてもらったし、この映画は、芸術点も高しという所も併せて評価しておきたいですね。

そうだよ、岩井マジックとも呼べるこの世界観の美しさ。これに触れとかないと。美しい画と音楽が紡ぎ出す世界というか、ゆっくり淡々と進行する中で生まれる味わい深い世界というか、うまくいえないけど、この世界に・空気にずっと浸かっていたいと思わせる感動がそこにはある。

これはなかなかすごいことで、そういう作品の良さってのはあまり理屈で語れないもんだ。突出したシナリオでもなく冗長で無駄なシーンが多いと感じる人もいるかもしれない。ただそれでもオレは最後には、賞賛の溜め息を漏らしてしまう。なんなんだろう。まさにマジック。

つーか、ただ単に自分の好みのセンスと合致しただけなのかもしれませんが、オレはそいつにやられましたの★9点でした。ヨシ、DVDとサントラをチェキだ!

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